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 この連休は、田舎の母が危篤状態になり帰省しました。奇跡的に持ち直してくれたので少し安心です。ただ、90歳になるので正直心配しています。
 東京では、4日、渋谷で、ドキュメンタリー映画「靖国」を妻と見ました。ものものしい警戒で、映画館の中にもガードマンらしき方が二人、前列に陣取るという具合でした。映写幕への攻撃を警戒してのものでしよう。ただ、そんな心配などどこふく風で映画はあっという間に二時間が過ぎました。映画は二組のドラマを交錯させながら淡々と進行していきます。一つはかって靖国で日本刀をつくったという90歳の刀工刈谷直治さんの日本刀制作と監督の対話で構成され、もう一つは8・15の靖国で繰り広げられる様々な光景です。軍服をきた人が英霊に哀悼の意を捧げる、また海軍の軍服をきて進軍ラッパをふき、天皇陛下万歳を三唱するといった、いわば60年前に一挙につれもどされたような感じの光景があるかと思うと、台湾で結成された高砂義勇兵の魂を靖国神社から取り戻そうとする台湾の人の行動が映し出される。一切のものが右や左から交差し乱れる。しかし、語り手は何もコメントしない。さまざまな靖国をめぐる言説、行動、記憶を集め、その錯綜する現場(映像)を観客に投げ出してくるだけだ。観客がどう考えるかにまかせている映画であり、それだけにかなり重い。個人的な感じであるがメディアで靖国の意味、あるいは思いこみをこれほど丁寧に伝えたものはないのではないか。それは中国人の監督だからこそできたことかもしれない。公平といってよいのかどうかわからないが、これだけ日本(人)の外から「靖国」が照らし出されると、靖国の問題に真正面からコミットしてこなかった戦後の日本人とは一体何者なのかが鋭く問われているような感じになる。たとえば、中野重治の「五勺の酒」にはアメリカによって戦死者の御霊をまつることを禁止された無念さが語られているが、私たちはこのこと一つをとってみてもどれだけ真剣であったかどうか疑問である。くにが戦死者の御霊に対してなんにもしてこなかった時、靖国神社は、この国際的力関係のいびつさの中で、認めるかどうかは別として、自分たちだけが英霊をお守りしてきたという思いがあるのだと思う。こういう人のいのちのねじれた扱いが残念ながらこの国にはあったことを知った上で遅まきながら戦争犠牲者への哀悼の意をどうするのか考える必要があるのかもしれない。
 いずれにしても反日的映画という攻撃がしかけられたが、この映画はそんなレベルをはるかに超えた映画であることはたしかなようだ。   前田角蔵


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