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試想の会のブログです。
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 学生会館のことは、前田先生と北の丸公園・千鳥ヶ淵に花見に行ったときに話を聞きました。しかし知らない僕らには昔から現在のような場であったように思えるから驚きです。
 とくに東京と言う場所に住んでいると、大資本によって町がありえないような変貌を遂げて行きます。そして10年も経つと、以前そこになにがあったか忘れ去られ、あたかも昔からずっとそうであったようなことになってしまいます。だから権力による歴史の捏造には気付きにくいし、だからつぶされていく、消されていく者の側の記憶に固執し、それを問い続けていくことには、私たちを支配している権力が何なのかを問うことでもありますね。

 ところで職場の高校の二学期と言うのは、夏休みが終わって生活のリズムが壊れ、しかも暑さで体が弱っているところに怒涛のように学校行事が行われるので、10月下旬の中間テストまでは息もつけません。最近、その緊張から解放され、たまった疲れが出たのか体調がいまひとつという感じです。心のリハビリではないのですが、僕も自分の趣味について文章を書いてみました。個人的なことばかりダラダラ書いていますがご容赦ください。


 30代の頃はジャズに関心があって、ジャズばかり聴いていたが、40代の後半になると再びクラシックが聴きたくなって、クラシックのCDを図書館で借りたり中古屋で安く買ったりして聴くようになった。クラシックの面白いところは、好きな曲に出会うと無数の異なる演奏家の演奏を聴き比べることが出来ることだ。最近ではブラームスの交響曲第二番やシベリウスのヴァイオリン交響曲が気に入って、いろいろなCDを聴き比べてみた。 ただ私は音楽はもっぱら聴くだけで、理論や演奏技術のなど専門的なことについてはわからないので音楽評論など書けない。ただ音楽を聴いていて文学を考える上でのヒントをもらうことがある。クラシック好きの人からすれば自明のことでも、それが文学にくるとそうではないということがある。そんなことで気づいたことについて書いてみようと思った。

 先日、市の図書館でやっとパブロ・カザルス指揮の、モーツァルトの後期交響曲を集めたCDを見つけた。借りたいとは思っていたのだが、いつも誰か借りていたのでお目にかかれなかった。昔レコードで聴いていたマルボーロ音楽祭でのライブ録音のCD版で、レコードはA面が38番「プラハ」でB面が39番だった。「プラハ」の第一楽章の第二主題の木管楽器の掛け合いがきらきらした木漏れ日のようで(――なんて気取っているのではなくて、音楽の言葉で表現する術を知らないので)大学生の頃、最も好きなレコードだった。それからレコードが聴けなくなって、他の指揮者の「プラハ」を聴いたがカザルスに及ぶものはなく、CDの存在は知っていたがめぐりあう機会はなかったのだ。
 懐かしかったので早速借りてきて、大きな期待をもって聴いてみた。だが実際聴いてみてがっかりした。なにか「やたら威厳はあるのだがのったりした」その演奏が「古色蒼然」という感じで、それまで大切に抱いていたいたイメージが裏切られたような感じだった。初恋の人に同窓会で再会してがっかりするような、誰でもよくあることだ。昔のイメージを抱き続けるうちに理想化しすぎてそれが一人歩きしてしまったということだ。
 ただその時「クラシック」という音楽自体にも、新しい、古いということがあるんだなあと、改めて面白く思った。

 ところでこのように、一人ひとりの聴き手にとって曲のイメージを決定づけるのは最初に聴いた演奏、もしくは最初に感動した演奏であって、特にレコードやCDの場合は繰り返し何度も聴くので、一つの曲をめぐるイメージは誰の演奏を聴いたかに大きく左右されてしまう。それほど豊かでもない田舎の子供だった私は町のレコード屋にも頻繁に通えるわけはなく、買った一枚のレコードを何度も何度も大切に聴いた。そういう場合ほど、そのレコードによって与えられる曲のイメージは決定的だ。
 たとえば私にとっての「プラハ」はカザルスのものだったし、ベートーヴェンの交響曲とジョージ・セルという指揮者は切り離すことが出来ない。当時カラヤンのレコードは2500円だったが、セルのレコードは廉価版と言って1300円で買えた。だから当時ジョージ・セルが何者だか知らないし、好き嫌いの問題ではなく、経済的な理由からセルのレコードばかりを買って聴いていた。このセルの影響は大きいもので、軽快なテンポで、細部に装飾のないシャープな、統一感のとれたジョージ・セルの指揮に慣れると、その後当時人気のあったカラヤンのレコードを聴くと大仰な芝居めいたものに聴こえて仕方なかった。だから今でもカラヤンは好きではない。ただ私は専門的なことはわからないのでたんに好き嫌いの問題でしかないが。
……続く  (高口)
 

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